日向ひまわり コメント vol.3 (2009/8/31)
夏になると必ず食べたくなるものがある。
冷やし中華だ。
 
二代目山陽に弟子入りし、初めて迎えた夏のこと。
「ひまわりくん、冷やし中華を注文してくれるかね」
「はい」
「君も食べるかい?」
「いただきます!」
やがてやってきた冷やし中華。
山陽は和からしをたっぷり添えるとズズズッと美味しそうにすすった。
私も師匠と同じようにからしをたっぷりつけてズッ、ズズズズッ。
「ゴホッ、ゴホッ!!」
一気にむせて涙が滲み出た。
しかし、八十半ばの師匠はそれを平然と食べていた。
山陽が食べ終わった後の皿には黄色く濁ったツユが残っていた。
 
翌日、
「ひまわりくん、冷やし中華を頼んでくれたまえ」
「はい」
「君も食べるかい?」
「ありがとうございます!」
ズズッ、ズズズズズッ。
 
夏場の食事は3回に1度が冷やし中華だったように思う。
そのくらい、山陽は冷やし中華が好きだった。
そして私も同じ数の冷やし中華を食べさせてもらった(からしの量は減らして)。
 
今も『冷やし中華始めました』の文字を見ると暖簾をくぐりたくなる。
お店の中で師匠が冷やし中華をすすっているような気がするのだ。
 
今夏、8月31日で山陽は生誕100年。
そんな風に年を数えることが苦手な私は人から聞いてそのことを知った。
そういえば太宰治も生誕100年?
同い年だったのか、、、知らなかった。
 
命日に食べようかなぁ、冷やし中華。


日向ひまわり
	  






 

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